ブラセリオ・ランタクランダク・ニュートルタール(以下、ブラスと呼称)は、幸運な 少年だった。  真夜中の盗賊匠合という産婆も呼べないような場所で産声を上げ、その数日後にはグラ スランナー故の気まぐれで母親だった女性は姿を消し、育った環境の所為で物心付く前に 錠前外しの技を仕込まれ、倫理観とは程遠い人生を歩んできた――  だが、グラスランナーであるが故に、そんな境遇を不幸などとは夢にも考えなかったの は幸運と云えるだろう。世間一般の評価は兎も角として。  彼には人間の言う「倫理」という奴がどうにも理解できなかった。  人殺しはいけないと云う――あんなに一杯居るんだから、少しぐらい減らさないと困る               と思う。ゴブリンじゃあるまいし、増え過ぎだよ。  盗みはいけないと云う―――あんなに一杯置いてあるんだから、1つぐらいイイじゃな               いか。一人じゃ食べきれないし、使えないよ?  人を愛せよと云う―――――愛って何さ?  そんなことより、彼にはもっと大事なものがあった。  それは笑いであり、楽しみであり、心躍る刺激であった。――尤も、世の中の大半のこ とは彼にとって、その大事なものではあったが。  彼は愚かだったが、愚鈍ではなかった。  危険なことやイヤなことは経験で知っていたし、それらを避ける術も同様だった。ただ し、経験していないことは心踊る刺激的なこととして彼の目に映ったが。  彼の外見も危険を避けるのに一役買った。子供のように見えるグラスランナーの中でも、 特に小柄な彼はしおらしい(と相手が考える)仕草をすればよほど致命的な(と相手が考 える)事態でない限りは難なく切り抜けることができた。  それでも駄目だった時は迷わず逃げ出した。一つ所に落ち着くのも悪くないが、旅をす るのはもっと楽しかったし、何より刺激に満ちていた。  旅の道連れもできた。  とある川縁で泥に半分埋まった箱の中から這い出てきた虎は、「ヴィットマン・ティー ガー」と名乗って彼の友となった。  ヴィットは声に出して物を云うことは出来なかったが、テレパシーで云いたいことを伝 えることが出来た。小柄なブラスをその背に乗せて走る事も出来た。  ただ、無闇に大食らいで、しかも毎日ブラスの精神力を3点ずつ消費させるのは頂けな かったが。おかげで食費が3倍に増えてしまったし、ブラスは夜中遊びに出かけることが 出来なくなってしまった(少なくとも、昼間寝ればいいと気づくまでは)  それでもやはり二人は友達だった。街に入る為に口輪を用意してやったり、街の外壁の 破れ目を見つけて(作って)其処から忍び込む手助けをしたりするぐらいには。  変わった友人も出来た。  ライラ・グリフィスと云う名の半妖精の娘は、とある事件をきっかけにしてことあるご とにブラスの前に現れては敵対したり競い合ったり、時には手助けしてくれたりと彼に刺 激に満ちた日々を提供している。  彼女の動機が子供っぽい好意の裏返しであるのは微笑ましいが。  周囲の目からすればその好意はかなりあからさまなものであるが、グラスランナーであ るブラスにそれを察しろと云うのは無理な話だろう。実際、全く気付く気配も無い訳で。  そんなこんなで、世にも幸せなブラセリオ・ランタクランダク・ニュートルタールは、 今日も今日とて幸せな日常を送っている。 ライバルキャラ 名前:ライラ・グリフィス(ハーフエルフ/女性/17歳) 能力値  器用度:16(+2)  筋 力: 8(+1)  敏捷度:15(+2)  生命力:14(+2)  知 力:18(+2)  精神力:16(+2) 技能:シャーマン:2(魔力:5/魔法強度:12)    シーフ  :1    レンジャー:2    セージ  :1 言語:(会話)共通語/西方語/精霊語    (読解)共通語/西方語/下位古代語 装備:ショートソード(必筋:4/攻:+3/打:4/ク:9(10)/追:+2)    ダガー    (必筋:4/攻:+3/打:4/ク:9(10)/追:+2)    ロングボウ  (必筋:4/攻:+4/打:9/ク:10(11)/追:+3)    ハードレザー (必筋:4/回:+3/防:4/     /減:−0) 経歴:人間生まれのハーフエルフ。    某盗賊匠合にて将来を嘱望される期待の新人だったが、ブラスと関わったのが運の   尽き。狙った獲物を横からさらわれるわ、取り戻しに追ってみれば「コレ、飽きた」   とアッサリ返されるわと、プライドをガタガタにされてしまった。    以来、ブラスをギャフンと云わせるべく彼を付け狙うが、物事に頓着しないグラス   ランナー相手にそんな事が出来る筈も無く、既に数ヶ月を無為に過ごしている。